※筆者プロフィール:AGA治療1年目/地方の対面AGAクリニックに通院中の30代会社員です。医療従事者ではありません。ここに書くのは、シャンプーというものと私がどう付き合ってきたかの記録です。特定の製品をすすめるものでも、効果を約束するものでもありません。治療の判断は必ず医師にご相談ください。

治療を始める前、私の頭の中には、ずっとこの声がありました。

シャンプーを変えれば、何とかなるんじゃないか

クリニックに行くのは大げさな気がする。薬を飲むのは怖い。でもシャンプーなら、明日から変えられる。お金も薬ほどかからない。誰にも知られずに始められる。だから最初に手を伸ばしたのは、病院ではなく、ドラッグストアの棚でした。

この記事では、シャンプーに期待していた1年前の私が、なぜ期待するのをやめたのか、そして今はどう付き合っているのかを書きます。シャンプーが悪いという話ではありません。シャンプーに背負わせる役割を、私が間違えていたという話です。

最初に:私が医師に聞いて、はっきりした線

結論から書きます。初診のとき、私は医師に「シャンプーで良くなりますか」と聞きました。返ってきた答えを、私なりに言い換えるとこうです。

シャンプーは、頭皮を洗うためのもの。AGAの原因に働きかけるものではない。

AGAは、体の中の仕組みが関わって進む状態だと説明を受けました。頭皮の表面を洗う行為と、体の中の仕組みは、別の場所の話です。どれだけ丁寧に洗っても、外側からの手入れは外側にとどまる。医師の説明は、そういう趣旨でした。

この線引きを聞いたとき、正直に言えば、少しがっかりしました。同時に、どこかで分かっていたことでもありました。半年ほど棚のシャンプーを変え続けても、鏡の中の自分に変化を感じられなかったからです。

なお、ここに書いたのは私が受けた説明を私の言葉に直したものです。薬の仕組みや効果についての解説は、この記事ではしません。気になる方は、診察のときに直接聞いてください。

なぜシャンプーに期待してしまうのか

治療を1年続けた今、あのころの自分を振り返ると、シャンプーに期待した理由は三つありました。

① 「まだ大丈夫」でいたかった

クリニックに行くというのは、自分の状態を認めることです。シャンプーで済むなら、まだ治療が要る段階ではない、と思っていられます。私が買っていたのは、シャンプーというより「まだ大丈夫」という感覚だったのだと思います。

② 売り場の言葉が、期待を後押しした

売り場には「頭皮環境」「ボリューム」「ハリ・コシ」といった言葉が並びます。どれも嘘ではないのでしょうが、私はそれを「薄毛が改善する」という意味に、勝手に読み替えていました。書いていないことを、自分で足して読んでいたのです。

③ 手軽さが、判断を先延ばしにさせた

クリニックは予約が要る。診察で自分の頭を見せる。費用の見通しも要る。それに比べて、シャンプーは今日買って今夜から使えます。この手軽さが、本当に必要な判断を半年遅らせました。最初の一歩をどう踏み出したかの記事にも書きましたが、私の場合、迷っていた時間そのものが、いちばんもったいなかった部分です。

半年間、シャンプーを変え続けて起きたこと

事実として何が起きたかを、感情と分けて書きます。

起きたこと:数か月ごとに製品を変え、そのたびに「今度こそ」と思い、数週間で「変わらない」と感じ、また別のものを探した。支出は積み上がり、頭の状態の変化は自分では判断できなかった。

感じたこと:変えるたびに少し安心し、慣れるたびに不安が戻った。安心と不安の波が短い周期で繰り返され、そのたびに鏡を見る回数が増えた。

今なら分かります。変化を判断する物差しを、私は持っていませんでした。何週間で何を見れば良し悪しが分かるのか、誰にも聞いていなかったからです。物差しのない実験は、いくら繰り返しても答えが出ません。経理の仕事で、評価基準を決めずに施策を試すと、あとで何も言えなくなるのと同じでした。

期待するのをやめてから、シャンプーはむしろ楽になった

治療を始め、シャンプーの役割が「洗うこと」に戻ってから、付き合い方がはっきりしました。

選ぶ基準は「洗い上がりが穏やかか」だけ

強い刺激を感じるものは使いません。洗ったあとに突っ張る感じが残るものも避けます。基準はそれだけです。値段の高い低いは、基準に入れていません。私にとって合うかどうかは、洗ったあとの頭皮の感覚で決めています。

これは診察で「頭皮を必要以上に刺激しないほうがいい」と聞いたことに沿った選び方です。ただし、どの製品が良いかを医師が指定したわけではありません。選ぶのは自分、線を引いてくれたのが医師という分担です。

洗い方は、ゆっくり、指の腹で

製品より、洗い方を変えたことのほうが、自分の中では大きな変化でした。以前は汚れを落とそうと指を立ててこすっていましたが、今は指の腹で、時間をかけて洗います。すすぎも長めにします。

これで薄毛がどうなるかは分かりません。そこは期待していません。ただ、頭皮に爪の跡が残る洗い方をやめたことは、明らかに良い変更でした。痛めていたものを、痛めなくなった。それだけで十分だと思っています。

変えない、を決めた

今使っているものは、ここ半年以上変えていません。ころころ変えていた時期とは正反対です。変えないと決めたことで、シャンプーについて考える時間が、生活からほとんど消えました。

これはセルフケアでやめたこと・続けていることで書いた「変えるなら一度にひとつだけ」の延長です。治療の経過を見るときに、他の要因を動かさないほうが、診察で状態を伝えやすいという理由もあります。

売り場の言葉を、今はこう読んでいる

期待をやめてから、売り場の表示の読み方も変わりました。ここは事実の話なので、感情と分けて書きます。

店で売られているシャンプーは、化粧品か、医薬部外品と呼ばれる区分のものがほとんどです。この区分の製品は、決まりごととして「病気を治す」と表示することができません。だから「頭皮環境を整える」「ハリ・コシを与える」といった言葉が使われています。書けないことは、書かれていない。これに気づいてから、表示を額面どおりに読めるようになりました。

裏を返せば、売り場の言葉を「薄毛が改善する」と読んでいたのは、製品の側ではなく、私の側の問題でした。書いていないことを読み取る癖は、不安が強いときほど出ます。今は、表示に「洗う」以外の役割を見つけたら、それは自分の期待が漏れ出しているサインだと受け止めています。

診察のときに、シャンプーについて聞いたこと

ここは、これから受診する方の参考になればと思って書きます。私が実際に医師に聞いた質問と、それがどう役に立ったかです。答えの中身は人によって違うはずなので、質問だけ挙げます。

  • 今使っているシャンプーを、そのまま使い続けていいか
  • 洗う回数は1日1回でいいか。夜と朝、どちらがいいか
  • 洗うときに、避けたほうがいいことはあるか
  • 頭皮に赤みやかゆみが出たら、どうすればいいか

この質問をしてよかったのは、シャンプーについて自分で調べる必要がなくなったことです。答えをもらった以上、それ以上の情報を探す理由がありません。検索で夜更かしする時間が、そのまま睡眠に戻りました。

もうひとつ、質問を紙に書いて持っていったのも良かった点です。診察室に入ると緊張して、聞きたいことの半分も出てきません。経理の仕事で、打ち合わせの前に確認事項を箇条書きにしておくのと同じ習慣を持ち込んだだけですが、これで聞き漏らしがなくなりました。

私の今の洗い方(参考までに)

効果を語る話ではなく、私が落ち着いた日課の記録として書きます。

洗うのは夜に1回だけです。朝は水で流す程度で、洗剤は使いません。お湯の温度は熱すぎないようにして、まず1分ほどお湯だけで流してから、シャンプーを手のひらで泡立てて頭に乗せます。指の腹でゆっくり動かし、爪は立てません。すすぎは、洗っていた時間より長くかけます。

これを続けて半年以上になりますが、続いている理由は簡単で、考えることがないからです。手順が決まっていると、その日の気分に左右されません。シャンプーを変え続けていた時期は、毎回「これでいいのか」と考えながら洗っていました。今はただ洗っています。治療の経過とは別に、この静かさは、私にとって大きな収穫でした。

シャンプーで悩んでいる人に、私が言えること

ここは、1年前の自分に向けて書きます。

まず、シャンプー選びで悩んでいる時間があるなら、その時間を一度、専門の窓口に相談する時間に振り向けてほしいと思います。相談したからといって、治療を始めなければならないわけではありません。私も初診では、費用と流れを聞いて、一度持ち帰って考えました。

次に、今のシャンプーが合っていると感じているなら、それは大切にしていいと思います。洗い上がりが心地よい、頭皮が突っ張らない。その感覚は、シャンプーが果たすべき役割をちゃんと果たしている証拠です。役割を果たしているものを、別の役割を果たさないからといって責める必要はありません。

最後に、売り場の言葉を自分で拡大解釈していないか、一度立ち止まってみてほしいです。書いてあることと、自分が読み取っていることの差。私はここに半年を使いました。

今も迷いが出る場面と、そのときの決め方

正直に書くと、今でも新しい製品の広告を見ると、少し心が動きます。治療を続けていても、この揺れが完全になくなることはありませんでした。

そのとき私が自分にする問いは、ひとつだけです。「それは、洗うためのものか。それとも、洗う以上のことを期待して買おうとしているか。」

前者なら、今のものに不満がなければ買いません。後者なら、その期待は診察に持っていくべきものです。買う前に、次の診察で聞くと決めておく。この一手間で、衝動で買ってしまう回数が目に見えて減りました。

まとめ

  • 頭皮を洗う行為と、薄毛が進む仕組みは別の場所の話だと、初診で線を引いてもらった
  • 私がシャンプーに求めていたのは「まだ大丈夫」という安心で、それが判断を半年遅らせた
  • 売り場の言葉を、自分で都合よく読み替えていた
  • 物差しを決めずに製品を替え続けても、答えは出なかった
  • 洗うための道具だと捉え直してからは、穏やかな洗い上がりかどうかだけで選んでいる
  • 製品より、爪を立てない洗い方に変えたことのほうが大きかった
  • 変えないと決めたら、考える時間が生活から消えた
  • 迷ったときは「洗う以上のことを期待していないか」と自分に問い、期待なら診察へ持っていく

シャンプーを責める記事にはしたくありませんでした。悪いのは製品ではなく、私が背負わせていた期待の大きさです。役割を戻してあげたら、シャンプーは毎日の小さな、心地よい習慣に戻りました。それで十分だったのだと、1年経った今は思います。

なお、この記事は個人の体験と考え方をまとめたものです。効果や安全性を保証するものではありません。ご自身に合う方法は、必ず医師にご相談ください。

※クリニックに足を運ぶ前に、まず話だけ聞いてみたい方へ。オンラインで診療を受けられるクリニックもあります。私のように迷う時間を長引かせないための、選択肢のひとつとして比べてみてください。(PR)

レバクリ